Roxi Basa（ロキシー・バサ）：想像の世界をデザインする

2024年1月18日～22日に開催されたメゾン・エ・オブジェのテーマは「テックエデン：新たな自然の目覚め」。持続可能な未来の基盤となる、科学と自然の関係の進化を探りました。そして、このシーズンの「INSPIRE ME!」フォーラムは、自然とテクノロジーが融合するホスピタリティの未来に焦点を当てています。このフォーラムで展示された作品のデザイナーに、そのヴィジョンについて聞いてみました。

想像の世界をデザインするアーティスト、ロキシー・バサ

あなたの経歴と作品について教えてください。

ロキシー・バサ、パリ出身でアムステルダム在住のアーティストです。ファッション写真家としてキャリアをスタートしました。ロックダウン中に3Dと出会い、自分の想像力こそが唯一の限界であることに気付きました。そして今、3Dを主な媒体として、この世にはない幻想的な世界を創り出しています。

力強いストーリーを語る、美しく神秘的な風景から、私の想像力の一部を垣間見ることができます。過去の記憶を呼び起こしたり、未来を投影したりするような、実験的なファンタジーを創り出すことを目指しています。

自然や神秘、異質なものなど、実在するものとしないものの両方からインスピレーションを得て、見る人が未知の可能性を受け入れられるような物語を紡ぎます。私が定義する新しい現実は「普通」を超越し、現代のテクノロジーを使って、オルタナティブな視点を描き出します。

フィクション（ここでは架空のイメージ）は、望ましい未来のシナリオを描くのに役立つでしょうか？

そう思います。このアート的なアプローチにより、私たちは日常の現実の限界を超えて、異なる世界を想像したり、既成の慣習に疑問を持つことができます。架空のイメージが別のシナリオを提示し、想像力を刺激し、私たちの社会が進む方向について深く考えさせるでしょう。現代の課題に創造的に取り組み、見過ごされがちな現実の側面を浮き彫りにし、気候変動やテクノロジーといった複雑な問題にも新たな視点がもたらされます。たとえそれが架空のものであったとしても、可能性のある未来に触れることで、感情や情動を呼び起こすことができます。この感情的な関与こそが、自らの価値観を振り返り、前向きな未来を目指して行動を起こすための強力な原動力となるのです。

自然らしさとデジタルの美的表現をどのように調和させるのですか？言い換えれば、どのようにしてオルタナティブな自然を想像するのでしょうか？

私の作品における自然とデジタルの美的表現の融合とは、有機的な要素とデジタルの世界がもたらす無限の可能性を調和させることです。デジタルの幻想的な美的表現を取り入れながら、自然の美しさを呼び起こすイメージを生み出したいと考えています。

オルタナティブな自然を想像するために、自然界に見られる形や模様、プロセスを参考にしながら、デジタルの創造性によってそれらを変換します。これにより、自然現象にインスパイアされた空想の風景や幻想的な生き物、超現実的な出来事を形作ることができます。

また、制作過程において3Dやその他の最新技術を駆使することで、現実世界を超えたコンセプトを実現しています。

このようなデジタル的なアプローチを取りながらも、ある種の自然さや有機的な要素とのつながりは保とうとしています。

私の理想とする世界では、自然はその本来の輝きとバランスを取り戻し、人間はそれと調和しながら共存しています。それは、人間と環境の共生が単なる理想ではなく、現実となった世界です。人間のつくる構造物は、生物多様性を尊重した持続可能な建築により、この新しい環境に溶け込みます。環境に優しいテクノロジーは、責任ある資源利用を伴って、人間の進歩と自然保護の間のバランスを保ち続けます。人間社会は動植物と共生します。そして、生物多様性を尊重するライフスタイルが、調和のとれた共存を育みます。

この理想化された世界では、人間が自然を支配するのではなく、この複雑な生態系の一部として共存しています。このヴィジョンでは、持続可能性と深い理解、相互の尊重が柱となり、人と自然の調和を取り戻すのです。

作品を通して、母なる自然の大切さについて深く考え、自然環境の美しさや必要性を認識してもらいたいのです。