2024年2月6日~8日 パリ、ノール・ヴィルパント展示会会場で開催された「プルミエール・ヴィジョン 2025年春夏」のレポート


イタリア企業の出展はやや少なかったものの、日本、韓国、台湾、中国などアジアからの出展が目立ち、トルコやポルトガルからの参加もあるなど、展示会は進化し続けています。

展示会場は、今シーズンを象徴する3つのフォーラムを中心に構成されました。

1. より意欲的で表現豊かな製品を取り上げるGeneral Forum(ジェネラル・フォーラム)

2. より実用的に、シャツ地やスーツ地、ニット、レースなど、生地の種類別に構成されたSourcing Forum(ソーシング・フォーラム)

3. 現在進行中の持続可能な製品やプロジェクトを紹介するSustinable Forum(サスティナブル・フォーラム)

今回は、新しい調達の方法として確立しつつあるデッドストックの提供を目的に、LVMHが 設立したNona Source(ノナ・ソース)、皮革のAdapta(アダプタ)、シャネルがサポートするL‘Atelier des Matières(ラトリエ・デ・マティエール)といった専門のスタートアップ企業の出展に加え、様々な出展者の在庫品を扱う専用スペースが設けられました。

また、招待状を持ったゲストのみが入場できる、Maisons d‘Exceptions(メゾン・ド・エクセプション)のスペースでは、現代的なものから伝統的なのものまで、希少で洗練された技術(刺繍、装飾、アクセサリーなど)をもつ、約20の工房や職人が紹介されました。

全体的に言えば、ここ数シーズンは「クワイエットラグジュアリー」や「ミニマル&エッセンシャル」なシーズンが続いたため、再び、質感のあるファブリック、ボリューム、クラフト調の見た目、大きなモチーフなど、テキスタイルの豊かさとファンタジー、装飾への欲求が高まっています。

そしてリネン、ヘンプ、リジェネラティブ・オーガニックコットン、ウールなどの天然素材も未だ注目を集めています。そして、ウール混生地が、気候の変化に対応するシーズンレスな素材としてますます広がりを見せています。

サスティナブル・フォーラムのハイライト

テキスタイルの製造は、化石資源や集約的農業、汚染を引き起こす化学的工程に代わる方法へと大きく転換しています。展示会では、その課題と以下の点が強調されました。

道徳的な天然素材

• 水の保護、生物多様性、土壌の再生を目指した取り組みへの認証。

• 原料の原産地とトレーサビリティ。

• ミュールシングを禁止する農場など、ウールにまつわる動物福祉の問題。

再生可能な化学繊維

• 農業廃棄物由来のポリマーの開発により、化石資源への依存を減らす。

• マイクロプラスチックの拡散を減らす。

• リサイクルと生分解性の促進。

道徳的な仕上げ加工

• ウォーターレスデニムなど、水やエネルギー、化学薬品の消費を削減する改革。

• 水の汚染除去とリサイクルを行う、クローズドループ(循環型)の染色工程。

• 色の堅牢性と再現性を高めた天然染料の進化。

服飾資材では、再生ポリエステルから作られたスパンコールなど、プラスチック素材の拡散を減らす取り組みが始まっています。

また、アウトドアの領域においては、防水生地に使用されるパーフルオロカーボン類(PFC)を排除することが課題となっています。そして、生分解性を高めた天然ワックスや植物性オイルなど、再生可能な天然資源由来のポリウレタンコーティングやメンブレンが使用されています。

持続可能なイノベーションの例:

• プレコンシューマ―またはポストコンシューマーテキスタイルのリサイクル。ポリエステルや、 Circulose®のような第二世代のセルロース系再生繊維。

• 農食品産業からの製品開発。パイナップルやバナナ由来の紡績繊維、または柑橘類の残渣、亜麻仁油、ヘンプのケミカルリサイクル。

• スパイバー社が開発した新技術では、ビール醸造に似た植物原料の発酵プロセスにより、ブリュード・プロテイン™フィラメントを製造する。

•ランザテック(Lanza Tech)社が開発した革新的な合成技術。製鉄所から出る産業排ガスからエタノールを生成し、ポリエステル繊維に変える。

2025年春夏ファブリック・トレンド

次に紹介するスタイリングはすべて、ペクレールの2025年春夏トレンドブックに掲載されたものです。このレポートでは、展示会の主要な4つの傾向の中から、2つを紹介します。

洗練された天然素材

植物繊維のスーツ地:シーズンレスなコットン混リネンまたはウール混リネン。ドライで 爽やかな質感、微かなスラブ、素朴というよりはシックな雰囲気をもつ一見無地の素材。

ネップ&霜降り:視覚効果のある一見無地の素材。不規則性とアルチザンの精神が、スーツ地に生命を吹き込む 。

都会的なリネン : リヨセル、シルク、ビスコース/レーヨンとの混紡による落ち感。軽量で 光沢のある仕上げにより、洗練された雰囲気に。

テクノロジーがもたらすファンタジー

テクノロジーの輝き : 玉虫光沢、透明感、パール光沢、サテン仕上げなど、光と戯れる技術。ハリ感、または落ち感のある軽量な素材。

3Dのテクスチャー : プリーツ、スモッキング、エンボス加工、ワッフル加工、浮き糸など、さなぎに変貌するようなファブリック。

きらめく反射 : 玉虫色のボイル、艶やかな表面、パール光沢のあるスパンコール、水を想起 させるビーズ刺繍など、精巧で優美な輝き。

このプルミエール・ヴィジョン2025年春夏の全レポートは、 ペクレール+ 購読特典となっております。ペクレール+につきましては、グノクル株式会社までお問い合わせください。

カテゴリー: