2024年1月18日~22日に開催されたメゾン・エ・オブジェのテーマは「テックエデン:新たな自然の目覚め」。持続可能な未来の基盤となる、科学と自然の関係の進化を探ります。そして、このシーズンの「INSPIRE ME!」フォーラムは、自然とテクノロジーが融合するホスピタリティの未来に焦点を当てています。このフォーラムで展示された作品のデザイナーに、そのヴィジョンについて聞いてみました。
総合的なデザインアプローチ、インフラストラクチャー・スタジオ
プロダクトや家具のデザイン、空間演出、ファッションまで手掛ける、インフラストラクチャー・スタジオとは?
インフラストラクチャー・スタジオは、デザインと建築のさまざまな領域をまたぐ、学際的なクリエイティブ・スタジオです。プロダクトデザイン、家具デザイン、空間演出、ファッションデザインなど、多様な分野を専門としています。
私たちは常に、建築とファッションデザインのバランスを追求しています。都市環境からインスピレーションを得て、素材や形を再利用し、従来の用途から逸脱した製品を生み出します。これは、私たちの視点を通して、都市のヴィジョンを共有する方法です。
あなた方の活動は多岐にわたりますが、どのような共通点がありますか?またどのように、インフラストラクチャー・スタジオの活動として統合するのでしょうか?
まず第一に、「構築」という考え方が共通しています。それから、私たちのプロジェクト間の唯一の違いは、使用する素材です。メディアを変えることで、特定の素材に偏ることなくすべての素材を同等に取り扱うことができます。また、環境に対する類似したヴィジョンを持つ私たち2人は、共通の活動を確立することができます。双子である私たちは、多くの文化的、芸術的、建築的影響を共有しています。2人の間のアイディアの交換はとても円滑で、お互いの視点をすぐに理解できるのです。
私たちの作品は、個人的な歴史とパリ郊外での生活によって形成されています。都市の要素や工業的な要素の取り入れ方から、それらを感じ取ることができるでしょう。私たちがいかに自分たちのテリトリーを理解し、それに関与しているかを示しています。
また私たちは、素材との物理的な関係を維持しながら、3Dモデリングや3Dプリントなどの現代の技術を積極的に取り入れます。私たちの家具はすべて手で裁断され、衣服もパターン制作から縫製、染色にいたるまですべて自社で行っています。この組み合わせにより、革新的でありながらも伝統的な職人技にしっかりと根ざしたプロジェクトを生み出すことができるのです。
美的表現と機能性を切り離して考えることは可能でしょうか? 特に、未来の衣服は住まいと同じ特性や要件を満たすものになるのでしょうか? 例えば衣服は、ノマドな住まいとしての役割を担うものになるのでしょうか?
私たちは、美しさは機能性にあると考えています。住まいとしての衣服について考えると、ドイツの建築家ゴットフリート・ゼンパーが思い浮かびます。彼は腰布からシャツ、コートといった最もシンプルな形状の衣服を、一種の初期建築、身体を包むものとして捉えていました。この考え方は、インフラストラクチャー・スタジオの服飾デザインに対する考え方に多くの影響を与えています。私たちは、衣服は建築的な表現であると同時に、非常に親密で個人的なものだと考えています。
私たちの目標は、着る人と共に成長する服を作り出すことです。私たちにとって、使用や着用の痕跡は美しさを増す要素です。だからこそ、私たちは染色工程に錆を使用します。この別のメディアを採用することで、素材に生命を吹き込み、表現することができます。私たちは単に服をデザインするだけでなく、人を包む「覆い」をデザインし、環境との隙間を埋めているのです。
あなた方の制作するプロダクトや服には、たとえどのようなメディアが採用されていたとしても、高度に建築的な側面が表れています。一方では建築家としての視点、もう一方ではファッションデザイナーとしての視点を交えているのでしょうか?また、それらはお互いをどのように高め合うのでしょうか?
私たちが双子であることは、創造的な成長において重要な役割を果たしてきました。私たちがそれぞれの分野で高等教育を受けていた頃、夜な夜なお互いのプロジェクトや日々の中で印象に残ったことについて語り合いました。そのおかげで、学び始めた頃からお互いの領域に足を踏み入れることができたのです。時々私たちは冗談で、アーサーは建築の勉強を、マセオはファッションデザインの勉強をそれぞれ20%づつ積み上げることができた、と言っているんです。
この組み合わせは、あまり混じり合うことのない2つの世界の間に創造的な対話を生み出しました。例えば、服にコンクリートやスチールといった素材を使うのは、マセオの建築的なヴィジョンからきたものです。一方でアーサーは、私たちの建築プロジェクトに繊細な形や質感、動きをもたらし、大きな役割を果たしています。
私たちは衣服であれ、プロダクトであれ、構造と形に細心の注意を払って制作しています。建築物よりも構造性が低く柔軟なものに対しても、シンプルな形や未加工の素材を使い、建築を思わせるデザインを施すことを好みます。
もうひとつのポイントは、環境を考慮に入れること、つまり、環境と人との間を仲介するプロダクトや衣服です。自然や都市デザインは、あなた方のアプローチにどのような影響を与えていますか?
私たちは、自然、都市環境、デザインの結びつきにインスピレーションを受けています。プロダクトも衣服も、私たちと空間のつながりの一部として捉えています。私たちのテリトリーとのつながりを反映していると言ってもいいでしょう。
現代建築や都市、コンクリートと私たちの関係には、特に興味深い側面があります。私たちがそれらに対し、抱いているのは、相反する感情です。例えば、大規模な団地やル・コルビュジエの作品のようなプロジェクトに魅了される一方で、それが生み出した社会的な問題、例えば、特定の人々の排斥という問題があることも知っています。したがって、これはむしろ造形的な美的魅力というよりも、子供の頃から無自覚に愛着が培われていき、この形状を「デフォルトで」美しいと感じているのです。大規模団地は、人々に秩序を保たせるためのコンクリートの箱のような場所ですが、このような欠点があるにもかかわらず、時間が経つにつれて、私たちはこれらの空間に対して一種の愛着を育み、自分のものにするのです。そこには、魅力と批判が入り混じった感情が存在します。
2024年1月18日から22日まで開催されたメゾン・エ・オブジェの「INSPIRE ME!」フォーラムでは、インフラストラクチャー・スタジオによるアーティスティックな作品が展示され、科学と自然の調和から生まれる、新しいホスピタリティの形を実現しました。
関連記事:
Mâche&Maché(マーシュ&マシェ):超進化する食品 | Peclers Paris
Roxi Basa(ロキシー・バサ):想像の世界をデザインする | Peclers Paris
[SPECTROOM] がデザインするGENCORK:原料から素材への変換 | Peclers Paris (peclersparisjapan.com)