2024年1月18日~22日に開催されたメゾン・エ・オブジェのテーマは「テックエデン:新たな自然の目覚め」。持続可能な未来の基盤となる、科学と自然の関係の進化を探ります。そして、このシーズンの「INSPIRE ME!」フォーラムは、自然とテクノロジーが融合するホスピタリティの未来に焦点を当てています。このフォーラムで展示された作品のデザイナーに、そのヴィジョンについて聞いてみました。

食品を超進化させる、マーシュ&マシェ

お二人はどのようにして出会い、このプロジェクトが生まれたのですか?

私たちは、同じイノベーション・エージェンシーに勤めていたことがあり、二人とも、食に関する課題に特化したいと考えていました。そして、取り組んでいたプロジェクトを通じて、食品のイノベーションにおけるヴィジョンを磨いていきました。具体的には、料理のノウハウを、技術的・工業的プロセスに融合させたいと考えたのです。そして、それを実現するためのアプローチを定義しました。さらに私たちは、それぞれのスキルを向上させることにしました。オリアーヌはシェフとしてのトレーニングを受け、ミシュランの星を獲得したレストランで働きました。また、アルノーはフードテックの新興企業でデザインの責任者を務め、機械を中心としたアーティスティックな活動を展開しました。

その後、私たちは「マーシュ&マシェ」プロジェクトを立ち上げました。これはデザイン、料理、食品の概念における私たちのスキルを結集したものです。

他のニッチな食品デザインの取り組み方とは異なり、あなた方は食品業界に大規模なソリューションを提供することを目指しています。工業食品と持続可能性は両立できるでしょうか?

工業食品というと、私たちはすぐに超加工食品を思い浮かべます。原材料のリストが非常に長く、添加物だらけで、健康や環境に悪い。

しかし、工業食品の問題は、機械によって加工されることではありません。むしろ、機械は大量生産を可能にし、コストを削減し、製品を一般化する手段です。持続可能な食品は、贅沢品ではありません。機械と工業的な製品こそが、新しい消費方法を一般化すると確信しています。

現在のモデルは、主に適用されている経済論理(いつでも、どこでも、同じ味であること、賞味期限が長いこと)によって、限界が生じています。工業食品は、現在の経済論理から離れ、新しいアプローチを試していけば、持続可能となり得ます。これには新しい食材や工程、流通方法を取り入れ、加工段階とプロセスを透明化することが必要です。

あなた方の提案には、食品の非物質化/「再物質化」(紙、液体)が関わっています。これはSFにおける食品の表現(1973年の映画「ソイレント・グリーン」)の中心的なプロセスです。未来の食品はどのようなものになると考えますか?

私たちの製品は従来のものとは異なる新しい形態ですが、今ある食品をサポートする役割を果たします。私たちの「紙」は、食品の包装用に使われ、その中身を引き立てます。また、私たちの飲料は、ミクソロジスト(さまざまなアプローチで新しいカクテルをつくる専門家)の技術を強調するために使用されています。

食べることは、単に栄養を摂取することではありません。感覚的な体験を生み出し、社会的な結びつきを強め、文化やアイデンティティを伝えることでもあります。食は総合的な体験であるべきです。

未来の食品も、その意味や歴史、価値を持ち続けるでしょう。進化や気候の保護に沿った新しい生産・加工方法を取り入れながら、総合的な感覚的体験を提供し続けるはずです。

このアプローチでは、食品はほとんど装飾のように使用されています。食品のこの2つの側面(装飾性/持続可能性)を同時に考えていますか?また、これらは共存・共鳴するものでしょうか?

もちろんです。私たちはまず食べ物を目で味わいます。持続可能な食品が広く受け入れられるためには、現在の食品よりも魅力的な経験を提供する必要があります。私たちは、美しさや品質と価値の高さ、持続可能性への要求を満たしつつ、新たな経験を提供したいと考えています。

ところで、あなた方は職人技と機械を調和させていますね。「拡張された」食品について、教えてください。機械を使わなければできないこととは、何でしょうか?

職人技と機械の調和と言えるかどうかはわかりません。でも、パティシエは卵を手で泡立てたりしませんよね。機械を使います。私たちのアプローチは、このような伝統的な技術的動作に、新しいテクノロジーをもって取り組みます。

機械は時間を節約し、再現性を確保し、コストを削減します。しかし何よりも、機械はあなたの製品について異なる考え方を可能にします。機械を使用する際に発生する制約や条件を計画の段階から織り込むことで、製品を別の角度から考えざるを得なくなる。これは、新しいタイプの製品や生産方法を生むアイディアにつながる可能性があります。


2024年1月18日から22日まで開催されたメゾン・エ・オブジェの「INSPIRE ME!」フォーラムでは、マーシュ&マシェによるアーティスティックな作品が展示され、科学と自然の調和から生まれる、新しいホスピタリティの形を実現しました。

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