9月7日から13日まで開催されたニューヨーク・ファッション・ウィークが幕を閉じました。ペクレールのファッションディレクターであるエリザベス・プラットがコレクションを分析します。

一般的に、ニューヨークで最も評価されているのは、フィリップ・リムやレイチェル・コーミーといったデザイナーに代表される、着やすさと創造性のバランスの良さです。

そして、アルチュザラプロエンザ・スクーラーサンディ・リャンのデザインには、90年代のプラダヘルムート・ラングの影響が色濃く現れており、洗練された控えめなミニマリズムが表現されました。Y2Kの派手でセクシーな美意識に代わり、無駄なものを排除した、驚くほどラグジュアリーなルックです。

コリーナ・ストラーダのように、人工知能の可能性を探求するブランドにも注目しています。また、ルアールのコレクションには、ドミニカ共和国のストリートカルチャーの影響が現れています。

PHILLIP LIM フィリップ・リム

フィリップ・リムはリアルなルックを代表するアメリカ人デザイナーの一人で、日常的な「アメリカン・スポーツウェア」と、よりドレスアップした要素のバランスが絶妙。

PROENZA SCHOULER プロエンザ・スクーラー

プロエンザ・スクーラーが際立っているのは、シーズン毎に目新しさを追求し続けるのでは なく、ブランドのシグネチャーを洗練させることにこだわっている点。「秋のコレクションを終えた後すぐに、その本質を守っていきたいと思いました」と述べています。

RACHEL COMEY レイチェル・コーミー

レイチェル・コーミーは、マルチメディアとパフォーマンス・アートの先駆者であるジョーン・ジョナスとコラボレーションし、派手でなくとも際立つ特別なコレクションを作り上げています。

SANDY LIANG サンディ・リャン

一目でわかるサンディ・リャンの「ダウンタウン・プリンセス」のユニフォームは健在。映画「ヴァージン・スーサイズ」のキャラクター、セシリア・リスボンからもインスピレーションを得ています。

ALTUZARRA アルチュザラ

人形や映画「ローズマリーの赤ちゃん」といった1960年代からのインスピレーション、そしてミウッチャ・プラダ的な美学が強く共鳴した、アルチュザラのコレクション。Y2Kのエッジーで挑発的なセクシーさに代わるアプローチ。

LUAR ルアール

フォーマルなファッションと挑発的なファッションが交差するルアール。CFDA(アメリカ・ファッション・デザイナー協議会)の「ウィメン・デザイナー・オブ・ザ・イヤー」部門にノミネートされています。今期のコレクションは、「エル・ホヨ」(スペイン語で「穴」を意味する)と呼ばれる、ドミニカ共和国の穏やかな地域からインスピレーションを受けています。

COLLINA STRADA コリーナ・ストラーダ

コリーナ・ストラーダは、過去のルックのイメージを画像生成AIのミッドジャーニーに学習させるために、複雑さの異なる一連のプロンプトを使用し、プロセスを導きました。そして、その結果を洗練させていき、コリーナ・ストラーダの本質を体現するコレクションを作り上げています。デザイナーのヒラリー・テイマーは、AIが彼女の創造性を刺激し、新たな方向を探求するよう促したと語っています。彼女にとってAIの有用性は、完成されたルックを生み出すことよりも、馴染みのあるアイデアを想像もしなかった形に刷新する能力にあると言います。さらに彼女はこの経験を、先入観にとらわれない子供のようだったと例えています。

AIはまた、服の形にも影響を与えており、たとえばコルセット風のドレスは、ボディスーツのようにフロント中央が長く伸びています。デジタルレンダリングを物理的な衣服に変換するという、大きな挑戦に取り組んだことは注目に値します。形や質感を再現するのはとても難しく、チームは、縫い目の位置や構成を模索しながら、それに適した生地を見つける必要がありました。ドレスの袖を完成させるのに4週間もかかったそうです。さらに、AIが生成した画像は1つの角度しか示さないため、ドレスの前身頃をつくることができても、後ろ身頃は独自にデザインしなければなりませんでした。

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