ペクレールは、2023年9月のメゾン・エ・オブジェのテーマを「ENJOY: A Quest for Pleasures（エンジョイ：喜びを求めて）」としました。このテーマは、快さと楽しさを追求し、より良い生活を実現しようという３つの新しい価値観と、そのペルソナを表しています。ペクレールはまた、このテーマを生き生きと具現化するために、会場の中心の150㎡のエリアに、デザインとライフスタイル、インスタレーションを組み合わせたフォーラムをデザインしました。
この「INSPIRE ME！（もっとひらめきを）」フォーラムで展開された3つの価値観のひとつ、「華やかな贅沢主義者」について紹介します。
華やかな贅沢主義者：人生はステージ
華やかな贅沢主義者は、願望や信念のままに、自分のアイデンティティを実験的に作り上げ、その存在や所属を示します。社会がインクルーシブで寛容な方向に進む中で、自分自身の在り方も変わり、これまで以上に選択肢と自由の幅が広がりました。独自性を肯定し、それを活かすことが、成功につながる鍵となっています。
この華やかな贅沢主義者は表面的な遊びを楽しみながら、演劇的な方法で自己表現し、真実とはかけ離れた過剰で華麗なイメージを打ち出します。観客であることを拒み、自分自身の幸福を求めて、伝統的な規範を覆し、センシュアルで自由なライフスタイルを送ります。公になり、共有されたプライベートな情報や体験は、人為的に作られた外面的な性質を持ちます。また、この華々しいライフスタイルにおいて、衣装は特権的に自己表現する手段です。
アイデンティティのさまざまな側面をユニークな方法で表現するために、この華やかな贅沢主義者は、日常のものをステータスを表す特別なものへと変えます。そして躊躇することなく、主張の強いプレシャスな美しさを取り入れ、グラマラスでドラマティックなスタイルを打ち出します。
華やかなベッドルーム
華やかな贅沢主義者を象徴する部屋は、まるでプライベートクラブのラウンジのような、温かみのあるプラム色と官能的なレッドの静かなベッドルームです。中央のナップ（Nap）によるドラマティックで大きなベッド「Room 603」は、マグニバーグ（Magniberg）のメタリックなシーツで覆われています。ベッドの上部には、アン＆エンジェル（an&angel）によるミラーの彫刻「Sun&Moon」が掛けられ、ラダー・インテリア（Radar Interior）のランプ「Cometa」とティム・テヴェン（Tim Teven）のスツール「Pressure」の金属の輝きを反射します。
この部屋にあるものは、本来のスタイルに留まらないひねりが効いています。部屋の角のUSM-ハラー（USM-Haller）のサイドボードはバーカウンターとして使われ、その上にはリリー・ジュリエット（Lily Juliet）のピンクのアイスペールとリフレクションズ・コペンハーゲン（Reflections Copenhagen）のカラフルなグラスが置かれています。また、ロラ・モッシーノ（Lola Mossino）とインドラ・ユーダリック（Indra Eudaric）による肌を飾るジュエリーや、人の身体のように官能的な曲線を持つプルーン・ファン・デイク（Pleun Von Dijk）の彫刻。さらに、ブルーメン（Blumen）による花のインスタレーションが、オドレイ・ラルジュ（Audrey Large）の有機的で彫刻のような花瓶と共に飾られます。最後に、パスカル・リスブール（Pascale Risbourg）によるトワル・ド・ジュイは、この伝統的なプリントの特徴である田舎の無邪気さを感じさせつつも、エロチックなスケッチが施されています。
2023年9月メゾン・エ・オブジェ「INSPIRE ME！」フォーラム
「Festive Decadents（華やかな贅沢主義者）」への出品者
「Festive Decadents（華やかな贅沢主義者） 」と「Sensitive Hedonists（感覚的な快楽主義） 」エリアについて、壁装材はDelius社、床材はTarkett社のご協力に感謝いたします。
インタビュー：オドレイ・ラルジュ（Audrey Large）、デジタルの物質化
ー あなたについて教えてください。
私はESAD（ランス美術学校）でオブジェクトデザインを学び、その後、オランダのアイントホーフェンデザインアカデミーで修士号を取得しました。ここから私の制作活動は、より実験的な方向に向かいます。2019年には、ヤン・ファン・アイク美術アカデミーでの1年間のレジデンシーに参加しました。このアカデミーは、作家やビジュアルアーティスト、建築家、デザイナー、キュレーターなど、さまざまな分野のクリエーターを受け入れており、私はここで、従来のアートとデザインの範疇から離れて、自由に創造性を追求することができました。その後はロッテルダムでスタジオを構え、個人的な研究に専念しています。
ー あなたの作品について教えてください。
感覚的で表現豊かで、中間的なもの。私の作品はデジタルイメージや彫刻を通して、物質性について問いかけます。作品を見た時、これは過去から来たのか未来から来たのか、人の手から生まれたものか機械の産物か、人工的なものか有機的なものか、デザインなのかアートなのか、機能的なのか抽象的なのか、デジタルなのか物質なのか、現実なのか非現実なのか、疑問に思うかもしれません。私にとって、これらの問いは関係ないのです。私の作品にはすべてがあります。そして常に中間なのです。私は作品を通じて、これらの伝統的な二元的な視点を超え、物質を異なる、より流動的な形で捉えようとしています。
ー 制作におけるこだわりは何ですか？
それぞれの作品を、輪郭のないオープンな世界として創造することです。画像処理技術とデジタルファブリケーションを組み合わせることで、曖昧な表面や不可能なオブジェクトを模索し続けています。言葉や言語では完全に説明できない、既知のものやありふれたものを超えるオブジェクト。私はこれらのオブジェクトに強い存在感を与え、ユーザーや観客の感覚的・知覚的な体験からストーリーが現れるようにしたいのです。それで私は、作品をどこまで解放できるのか、常にその限界を探求しています。あらかじめ定義せず、誰もが自分のものにできるように。
ー 好きな色と素材は何ですか？
現実の知覚に挑戦するような表面感が好きです。それが何なのかはっきりとわからない素材、説明することのできない素材です。光と遊ぶ反射。物質の絶え間ない移り変わりを表現する流動性。これらは、写真の歴史や技法からの影響でもあります。私は、触覚的なイリュージョンが好きなんです。
ー 毎日の生活で、あなたにインスピレーションをもたらすものは？
すべてです！３Dで彫刻したり、絵を描く時、そのプロセスは私個人の経験や感情に基づいています。そして、「この作品は…に触発された」というような直接的で簡単な説明を避けるようにしています。創作と同じように、答えもオープンにしておきたいのです。それとは別に、創作の方法としては特に、画像制作の細部を分析し、理解して、これをデジタルファブリケーションと組み合わせることが楽しいです。
ー どのように人々に喜びをもたらすオブジェクトを製作していますか？
私にとって、オブジェクトは単なる実用性のために大量生産される無機質な物体以上のものです。オブジェクトに自分の空想や疑問、感情を注ぎ込むことによって、感覚に作用する力が生まれると信じています。私は必ずしもユーザーに喜びをもたらすことを求めてはいません。時には私の作品が混乱や嫌悪を引き起こす可能性があると思っています。しかし、それらは想像力への扉なのです。
ー 「INSPIRE ME!」フォーラムで発表する作品について教えてください。
手を使いながらデジタルで彫刻し、その後3Dプリントで実体化した、玉虫色の生分解性バイオプラスチック製の花瓶です。そして、ビジターにもこれを体験してもらいます。ヒントはピンク色です！
「INSPIRE ME!」フォーラムの他の2つのペルソナ「Sensitive Hedonists（感覚的な快楽主義者）」 「Collective Optimists（共感的な楽観主義者）」についてもご覧ください。
