エンバイロメント 2022年春夏号は、かつて私たちが経験したことのない危機の只中で構想されました。この状況下において、これまでの美的・概念的なバイアスに対する疑問がますます浮き彫りになっています。そして当然のように、持続可能で実用性の高いデザインを守ろうという私たちの意思が強まったのです。

この私たちの願いは「シンプレックス(シンプル+コンプレックス=シンプルな複合)」というテーマに反映されています。またロックダウン中に、SNSを通じて様々なデジタルイメージや表現が広がったように、私たちの日常の世界は、もはやデジタルの領域がもたらす無限の空間なしでは成り立たちません。この現実から切り離されたイマジネーションの世界が、新しい世界観と美的表現の可能性を切り開いています「シュルレアル(超現実)」。

また、国境をまたがる移動が縮小し、マイクロツーリズムのように地域的な文化や歴史を振り返る動きも強まっています。「ローカル」と「スプレンダー(壮麗)」は、地域や国に伝わる集合的な記憶を取り戻し、その優れたノウハウや技術を元に、現代に根ざした新たな美的表現を模索します。

今、他者や時間、空間との関係を問う、かつてない幕間の時を迎えています。