「ノームコア」の登場から今日まで、カジュアルウェアは私たちの毎日のワードローブに浸透してきました。スタイルとしてだけでなく、私たちのライフスタイルにも影響を与えています。ペクレール・パリのロール・バロンが、ウィメンズファッションにおける2021-22年秋冬のキーポイントについて語ります。

ウィメンズファッションにおいて、カジュアルウェアはどのように変化しましたか?

ペクレールでは、「ノームコア」という言葉が生まれる1年前から、カジュアルウェアを取り上げてきました。当時は、グランジがリバイバルし始めていて、 90年代とビッグTシャツに注目していました。また、アンドロジナス・ルックの登場は、アジェンダー(無性別)のトレンドをもたらしました。それまでのファッションは、とてもシックでドレッシーでした。ですから、このカジュアルスタイルの登場は、とても新鮮に感じられたのです。

それからすぐに様々なブランドが、ファッションショーでストリートルックを展開し始め、ファッションをより身近なものに変えました。中でもテルファーは、アスレジャーに影響を受けた、ニュートラルカラーのジーンズとTシャツのコレクションを打ち出しています。この流れによってファッションショーはより「クール」になり、スニーカーが注目のアイテムとなりました。また、シンプルさが求められるようになり、カジュアルウェアがプレタポルテに広がっていき、私たちのライフスタイルや価値観にも影響をもたらしました。2015年3月にヴェトモンのデザイナー、デムナ・ヴァザリアは、従来のファッションのコードを壊したコレクションを発表しています。カジュアルウェアの定番アイテムを分解し、「クチュール」のインパクトを加えて、アンダーグラウンドな魅力を生み出しました。同時に、フィービー・ファイロがランウェイで履いていたスタンスミスの人気にも火がつきました。たった数ヶ月の間に、カジュアルウェアはファッションの中心的役割を担うようになったのです。そして10月、デムナ・ヴァザリアはバレンシアガのクリエイティブ・ディレクターに就任しました。その後、ヴァージル・アブローがルイ・ヴィトンのメンズウェアのクリエイティブ・ディレクターに任命され、カジュアルウェアの隆盛が確実なものとなりました。

そして着心地の良い日常着は、ファッションの中心的アイテムとなりました。このファッションの大衆化は、ラグジュアリーな世界にカジュアルだけでなく、ポップカルチャーをも浸透させました。

ペクレールのウィメンズトレンドブックには、この巧妙なミックス感とクールなアティチュードが反映されています。

現在のウィメンズファッションはどうでしょう?新しい動きは現れていますか?

今、ファッションは、ブルジョワルックを掘り下げたプレッピーなスタイルに回帰しています。ですがこのトレンドは、カジュアルウェアを消滅させるものではなく、カジュアルルックの中に取り入れられています。シルエットはよりシンプルになり、リラックスしたムードで表現されています。

このファッションへのアプローチは、私たちのライフスタイルの変化と強く結びついています。働く女性の服についても、堅苦しさのない「クールな」オフィスルックが求められています。スーツとスニーカーの組み合わせはパワーを象徴し、自信を与えます。女性たちは自分が着たい服を熟知し、着心地の良さを求めているのです。

着心地の良さは、カジュアルスタイルに深く結びついています。着ていて気分の良い服は、嘘をついたり我慢したりする必要がありません。このメリットを享受しない理由などないでしょう。

今、意識が高まりつつあるサスティナブルファッションについてはどうでしょう? カジュアルウェアは環境問題に対してどのような立ち位置にありますか?

多くの若いブランドが、長期的な視野で倫理的な取り組みをしています:服をリサイクルしたり、再生プラスチックから作られた新素材を使用したり、地元での生産にこだわったり。牽引するこれらのクリエーティブなブランドは小さいけれども、人々の共感を得ており、彼らの成功が他の多くのブランドに影響を与えることは間違いありません。

カジュアルウェアは、サスティナブルでベーシックなアイテムで構成された、長く愛されるワードローブだと思います。新しいプリントを取り入れたり、新しいファッションムードに合わせたりして、さまざまな着回しが可能です。季節ごとに手放す必要がなく、ひねりを加えて着こなせる適切なアイテムが求められています。私たちファッション業界の人間は、現実的でありながらも、人々に夢を与え続けなければなりません。難しい挑戦ですが、様々なアイディアを与えてくれるやりがいのある挑戦です。

 2021-22年秋冬は、色が重要とのことですが、これはどのような理由からですか?

色に対するニーズが高まるというよりも、本能的な欲求によるものです。このシーズンの色は、ウェルビーイングに深く結びついています。色はさらに強く、心地良く、本能的なトーンになります。論理ではなく感覚に訴求するのです。頭で考えるのではなく、感じるのです。ペクレールのトレンドブックでは、「クリーン」ではない、ラフでプリミティブな見た目のファブリックに色を取り入れています。それぞれのブランドの定番をアップデートするのにとても良い方法だと思います。