9月4日から5日間にわたり、パリのノール・ヴィルパント展示会場で開催されたメゾン・エ・オブジェ。ぺクレールのエンバイロメント&デザインチームが、この必見の展示会から新シーズンの潮流をレポートします。
1月の展示会を引き継ぎつつ、この9月展では「モノやインテリアとの関係」により焦点を 当て、厳選されたセレクションを提示しました。また、パリ・デザインウィークとの連携を強め、新進気鋭のデザイナーや新しいブランドにもスポットを当てています。
今季のテーマは「リニューアル(更新)」。デザイナーのアメリ・ピシャールが、アートディレクションを担当しました。中でも注目を集めたのは、クリエイティブスタジオ BlumenとAIのコラボから生まれた「ハウス・ティーポット」。家をかたどったユーモラスなオブジェは、境界のない開かれた住まいを象徴し、クラフツマンシップと人工知能の対話を鮮やかに表現しています。
アメリ・ピシャールによる「ウェルカム・ホーム」
アメリ・ピシャールは、今回の展示会のために「ウェルカム・ホーム」と題した没入型インスタレーションを製作しました。自由な発想に貫かれたそのデザイン哲学は、「オープンであることを示す強いメッセージ」であり、「シンプルさへの賛美」でもあります。デザインとクラフツマンシップが交わり、ユーモラスなタッチが加えられたシンプルでコンセプチュアルな空間演出は、「常に変化し続ける住まい」という概念を映し出しています。

デザイン・ディストリクト:才能とアイデアがあふれる、新しいクリエイティブの拠点
今シーズンのもうひとつのハイライトは、次世代デザイナーに捧げられた新しいスペース 「デザイン・ディストリクト」。パリ・デザインウィーク・ファクトリーとの協働で誕生したこのエリアは、Hall Hausコレクティブの独自の美学に基づきデザインされ、従来の枠にとらわれない大胆な発想と、実験的な挑戦を讃えています。
ここでは Future On Stage や Rising Talent Awards、Maison&Objet Factoryといった プログラムを通じて、新しい才能が次々と紹介されました。まさに「未来のトレンドを見出す場」として、ぺクレールの「エンバイロメント&デザイン 27年春夏」トレンドブックの方向性を裏付ける内容です。

「エンバイロメント&デザイン 27年春夏」のテーマ「デイリー・ライフ」で提示した、爽やかで明るい機能的デザインが具体的なかたちに。
性能ばかりを追い求めることに疲弊し、改めて「シンプルな所作」に価値が見出されています。こうした変化はより繊細でオープン、かつ感情に寄り添う空間のあり方を示します。デザインはもはや「機能」と「感情」を切り離すのではなく、それらを結びつけ、日常の営みに柔らかさや親密さ、そして喜びを吹き込むものとなるのです。
この「日常の新たな解釈」は、今回のメゾン・エ・オブジェにも色濃く反映されていました。
1)Duplex
Duplexは、最新のエコデザイン家具コレクションを発表。このシリーズは工業廃棄物のみを使用し、美しさを犠牲にしない循環型のアプローチによって製作されています。丸みを帯びたフォルムとグラフィカルなカラーパレットが、私たちの目を瞬時にとらえました。
2) Studio Œ
Studio Œは、リサ・エルテルとアンヌ=ソフィー・オーベルクロームによって設立された、ベルリンのデザインスタジオです。素材の特性や日常の現象に潜む詩的な側面を探求し、独自の物語を紡ぐ作品を生み出しています。最新コレクションは、機能性と繊細さを兼ね備えており、工業的なシルエットと詩的な物語が見事に融合しています。
3) Hall Haus
アブドゥライエ・ニアン、サミー・ベルヌッシ、テディ・サンチェス、ザカリ・ブハリによって設立された Hall Hausは、現代フランスのデザインシーンにおいて確かな存在感を放っています。革新的かつ持続可能なアプローチを軸に、文化・体験・機能性を融合させたデザインが特徴です。
4) Haus Otto
Haus Ottoは、デザイナーとアーティストによるデュオ。環境への影響やデザインの現代的な文脈を探求し、日常のオブジェに遊び心を加えます。巨大な「Zooom ラウンジラグ」や屋内外で使える金属製チェア「AL13」など、インダストリアルデザインの要素を軽やかに再解釈しています。
5) Fabricario
キャビネットメーカーでありデザイナーでもあるジュリアン・ヴィカリオが、自身のブランド Fabricarioから初の木製シーティングコレクションを発表しました。家族の伝統にオマージュを捧げるブランドの製品の中でも、とりわけ「ベルナルド・アームチェア」は、丸みを帯びたラインとシンプルな構造が際立ち、コンテンポラリーで力強いクラフトマンシップを体現しています。
6) Moritz Walter
ベルリンを拠点とするインダストリアルデザイナー モリッツ・ヴァルターは、シンプルで親しみやすい日常使いのプロダクトを手がけています。特に目を引いたのは「Hotspot」プロジェクト。持ち運び可能な蓄熱ユニットによる分散型の暖房システムで、用途や状況に応じて柔軟に調整できる革新的な製品です。
7) Hilo
Future On Stage の受賞者である アデリーヌ・ミシェロッティが開発した、工具不要のモジュール式家具。ガスピストンを活用したテンション式の固定機構は、機動性・革新性・持続可能性を備えており、次世代のライフスタイルのためのソリューションを提示しています。

「エンバイロメント&デザイン 27年春夏」のもう一つのテーマ「センシビリティ」は、創造の中心に「感情」を据える。
長年にわたり、テクノロジー主導の都市計画や高度なネットワーク化が進んできました。そうした時代の流れの中で、今、人々の心に「穏やかさ」ともいえる新しい感覚が芽生えつつあります。ヘリテージブランドは、自らが持つ歴史や遺産を新しい視点でとらえ直し、より親しみやすく、感覚的な現代の物語を紡ぎ出しています。
そこから生まれているのが「新しいロマンティシズム」です。この流れは、伝統的な要素を自由に、あるいは繊細に取り入れた、遊び心のあるコレクションにも表れています。
1)Teun Zwets X Maison Deux
Maison Deuxはオランダ人デザイナーのトゥーン・ズウェッツと共に、大胆でエクスクルーシブなテキスタイルコレクションを発表しました。ラフな美学と即興的なデザインアプローチで知られるトゥーンは、Maison Deuxの世界にアーティスティックな感覚を吹き込み、遊び心とノスタルジーにあふれたベッドルームを創り出しています。
2) Lucie Sotty
ルーシー・ソティは、イエールとベルリンを拠点に活動する陶芸家です。「絵画的な質感」にこだわり、ひとつひとつの表面を「生きたキャンバス」として、手作業で釉薬を施します。アートとクラフツマンシップが融合する彼女の作品は、繊細さを湛えながらも、見る人に喜びと明るさをもたらします。
3) ENSEMBLE
Ensembleは家族経営のホームリネンスタジオ。フランス国内のデッドストック素材に新たな命を吹き込み、地元でアップサイクルする取り組みを行っています。繊細なパッチワークによって、一つひとつの作品に個性と感性豊かな物語が宿ります。
4) Sophie Lou Jacobsen
フランス系アメリカ人デザイナーのソフィー・ルー・ジェイコブセンは、ニューヨークを拠点に日常のオブジェを探求しています。ガラスを主な素材とし、人とモノの間に生まれる詩的な対話を追求。その結果、繊細で感覚的なテーブルウェアコレクションが生まれました。「形と機能の両面に、使い手の気分を高める力がある」という考えが込められています。
5) Julie Mallet Studio
繊細なオブジェや彫刻的な照明を提案するJulie Mallet Studio。革新的な製造技術、ヴィンテージの美学、そしてバイオ由来素材を組み合わせることで、3Dプリントに繊細でやさしい表現をもたらしています。
6) Ofumum
フレグランス&ウェルネス部門の新規出展者であるオフマムは、陶芸家と調香師によるパフュームブランド。季節ごとの限定コレクションを共同で制作しています。アンティークから着想を得た彫刻的な容器が、時を越えるような感覚的で詩的な旅へと誘います。

ぺクレールは、「エンバイロメント&デザイン」トレンドブックやコンサルティングを通じて、デザイン、ホスピタリティ、インテリアのプロのみなさまに、未来を描くインスピレーションと新しい創造のきっかけをお届けしています。
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