今後流行する色や素材を予測するだけでも難易度の高い作業ですが、それらを3Dで可視化することは、さらに高度な挑戦です。この課題に取り組むため、ペクレールはAdobeのSubstance 3D Assetsチームと提携し、現在および今後のトレンドを反映した3Dデジタル素材のコレクションを制作しました。
トレンド予測におけるペクレールの深い専門知識と、Adobeの最先端デジタル技術が融合したコレクションです。
データに基づいた、デザイナー中心のアプローチ
このパートナーシップの目的は、プロダクトデザイナーにインスピレーションを与えるだけでなく、それぞれの業界に即した実用的なコンテンツを提供することでした。両チームは、現在および将来のデザイントレンドに沿ったカラーと素材の組み合わせを特定したうえで、パラメーターによって自由にカスタマイズできる40種類以上の3D素材を開発しました。これらすべての素材は、Substance 3D Assetsライブラリにて利用可能です。

50年以上にわたりトレンド予測の分野をリードしてきたペクレールは、世界最大規模のマーケティング・コミュニケーション企業グループ「WPP」に属するエージェンシーでもあります。戦略的コンサルティングやトレンドブックを通じて、ファッション、ビューティー、デザイン、ライフスタイル、フード、ホスピタリティなど幅広い業界で、世界中のブランドが流行の兆しを企画や製品開発へとつなげるための支援を行っています。 特に、カラー、美的感性、デザインイノベーションに強みを持っています。


今回のパラメトリック素材には、ペクレールが提案したトレンドカラーがプリセットとして組み込まれています。Substance 3D Assetsチームは、これらの素材をさまざまな3Dモデルに適用し、実際のプロダクトデザインにおける活用イメージを明確に可視化しました。各モデルは、一貫した色・素材・加工(CMF)戦略に基づいて構成されており、細部に至るまでフォトリアルに再現されています。デザイナーが、理想の製品イメージを高い精度で表現することが可能です。
このコレクションには、40種類以上の素材が収録されており、ユーザーがそれらを実際のオブジェクトに施したイメージが確認できるよう、いくつかの3Dモデルも追加しています。素材を制作する際にとても重要なのは、現実と画面上の見た目にズレがない“デジタルツイン”を実現することです。フォトリアルな仕上がりを追求することが、その鍵となります。
Anaïs Lamellière(アナイス・ラメリエール)
Adobe Substance 3D プロダクトマネージャー & CMFデザイナー
重要なのは、このコレクションが単なる一つの製品やオブジェクトのためのツールではないという点です。製品ライン全体、さらにはブランドのポートフォリオ全体におけるカラーや素材の検討を支援するために設計されており、スケール感のあるプロジェクトでも美的な統一性を保ちながら、効率的にデザイン作業を進めることができます。
デザインを左右する意思決定
カラーや素材の選択は、単なる見た目以上の意味を持っています。それらは、製品の品質に対する印象や感情的な共鳴、さらには消費者の嗜好・価値観・文化的背景との親和性にまで大きな影響を与えます。言い換えれば、CMFの選択は、製品の体験価値や市場での評価を大きく左右する重要な要素なのです。
私は常に、心を刺激する豊かなコンテンツや、さまざまな種類のアート―映画や音楽、最新のデザインなど―に触れて、感性を養うようにしています。デザイナーである私にとって、素材やプロダクトに実際に触れることは、とても重要なのです。
Charlotte Cazals(シャルロット・カザルス)
ペクレール・パリ トレンドフォーキャスター/デザイナー
近年、多くのデザイナーが、コンセプト開発の初期段階から3Dツールを積極的に取り入れるようになっています。しかしその一方で、CMFデザインは依然として開発の後半に扱われる傾向が強く、そのタイムラグが開発サイクル全体のスピードを鈍らせる要因となっています。
こうした課題に対し、カラーや素材に関するデータをデザイン初期の段階で統合することで、チームはリアルタイムでのイテレーション(試行錯誤)や、迅速かつ確信を持った意思決定が可能になります。さらに、実物と同等の精度を持つ“デジタルツイン”によるフォトリアルなプレビューを活用することで、完成イメージを早期に確認できます。これにより、デザインから製造へのプロセスが効率化され、物理的なサンプルや試作品の必要性が大幅に減少。加えて、製造前の製品をビジュアルで提示することで、販売促進やマーケティングへの活用も可能になります。
この3D素材の完成度には本当に驚かされます。私たちが提案した素材のすべてが、細部に至るまで高精度に再現されており、まさに魔法のようです。
Valérie Niang(ヴァレリー・ニアン)
ペクレール・パリ コンサルティング部門責任者
フォトリアルな3Dアセットは、初期段階のコンセプトを即座に明確なビジュアルへと変換できるツールです。これにより、クリエイティブチーム、サプライヤー、ステークホルダーが、統一されたビジョンのもとに足並みを揃えることができます。さらに、デザイン段階で作成されたアセットは、その後の工程でも利用可能であり、マーケティング、営業、エンジニアリングなど多部門のニーズにも対応します。

より速く、よりスマートにデザインするためのツールボックス
このコレクションは、プロダクトデザイナーのための自由度が高いツールボックスとして設計されました。ペクレールが提案する8つのテーマ別マテリアルグループは、それぞれが質感を表すムードボードと厳選されたカラーパレットで構成されています。

さらにSubstance 3D Assetsチームのテクニカルアーティストたちは、金属のヘアライン加工、マット/グロス、シボ仕上げなどの加工を施した40種類以上の素材をデジタルで再現しました。これらの素材はすべて、色・表面効果・パターンなどの要素を簡単に調整できるパラメーターを備えており、デザイナーが思いどおりにコントロールできる仕様になっています。
アーティストにとって重要なのは、さまざまなツール同士が連携できる強力なアプリケーション環境を持つことです。それがあれば、作業は速くなり、クオリティも確実に上がります。
Jean-Bastien Juneau-Rouleau(ジャン=バスティアン・ジュノー=ルロー)
Adobe Substance 3D/3Dマテリアルアーティスト
Substance 3Dのパラメトリック技術により、デザイナーがこれまでファブラボや工作室で行っていたようなCMFの検証作業を、バーチャルかつ即時に、しかもサンプルコストをかけずに実現できるようになりました。このコラボレーションは、従来の「トレンドブック」の形式を、リアルタイムで活用できるデザインリソースとしてデジタル化したものであり、デザイナーが自由に試しながら、制作プロセスの初期段階で的確な意思決定を行うことを可能にします。
未来を見据えたマテリアル戦略のためのパートナーシップ
Adobe Substance 3D Assetsとペクレールによる今回のコラボレーションは、トレンドの知見とデジタルイノベーションが融合することで、デザイナーの創造力をさらに広げられることを示しています。カラーと素材の専門的な予測に基づいたパラメトリック素材は、デザイナーにとって、より迅速かつ柔軟に反復検証できるワークフローを実現し、変化し続ける消費者の嗜好に合った製品開発を支援します。また、トレンドに対応したデジタル素材をデザインプロセスの初期段階から組み込むことで、スムーズで確信を持てる3Dクリエイションが実現します。
ペクレールのマテリアルコレクションは、現在Substance 3D Assetsで公開中です。