2025年4月7日から13日まで開催されたミラノ・デザインウィーク。その中心的存在であるサローネ・デル・モービレから、関係者限定のショールーム、そして舞台美術のような没入型インスタレーションまで、インスピレーションと新たな発見を求めて街を巡ります。
第63回を迎えた今年のサローネ・デル・モービレでは、隔年開催の「エウロルーチェ」が復活し、“光”がメインテーマとなりました。このイベントには毎年、37カ国から2,000以上の出展者とおよそ40万人の来場者が集まります。参加する306ブランドの45%が国外からの出展です。今年のエウロルーチェのテーマは 「過去と未来のあいだの光」 。大胆な実験精神と名作デザインのリイシューに注目が集まりました。
会場外のフォーリサローネも、ミラノの思いがけない場所で行われるインスタレーションやプロジェクトによって、ますます活気を帯びています。さらに今年は、4つの会場で開催されたアルコヴァやルーカス・ジートがキュレーションした新プロジェクト「グッド・コレクション」など、ミラノ郊外のヴァレードまで広がりました。その展示の多くは、単なる製品のディスプレイを超えて、空間演出を重視した没入型の体験へと進化しています。
デザイン・ウィークは今や、熱心なデザイン愛好家だけでなく、より広い層に向けて開かれたイベントへと成長しています。ファッションブランドも存在感を強めており、エルメス、ルイ・ヴィトン、ロエベに加え、今年はグッチ、サンローラン、ロロ・ピアーナも参加。 各ブランドがオブジェやクラフツマンシップを披露しました。プラダはシンポジウム「プラダ・フレイムズ」を継続し、フェラガモやバイレードは若い世代のクリエイティブ層に訴求するポップアップやプロモーションで街を彩りました。 今回のミラノ・デザインウィークは、ペクレールの「エンバイロメント&デザイン26-27年秋冬」トレンドブックの主要なテーマともリンクしています。たとえば、クラシックとヘリテージを現代的に再解釈する「プレリュード(序章)」のコンセプトは、多くの展示に見られました。また、“アイコン”という概念を現代的なデザインの中心に据える「マジェスティック(壮麗)」のアプローチも注目を集めています。
このレポートでは、「プレリュード(序章)」に関する展示会の分析をご紹介します。
👉 「マジェスティック(壮麗)」の詳細は、ペクレール+で。
「プレリュード(序章)」
ヴィステリア財団では、展覧会「ロマンティック・ブルータリズム:ポーランドのクラフトとデザインへの旅」が開催されました。
この展示では、新世代のポーランド人アーティストやデザイナーが一堂に会し、伝統的な技法と文化的遺産に深く根ざした作品を発表。ロマンティシズムと無骨なブルータリズムが交差する、新たなフォークロアの形を描き出しています。


いまや象徴的な存在となったヴィラ・ボルサーニで開催されたアルコヴァでは英国人デザイナー、フェイ・トゥーグッドと日本の陶磁器メーカー、ノリタケとのコラボレーションによる新作テーブルウェア・コレクションが発表されました。手描きのフローラルモチーフがあしらわれた このコレクションは、繊細さと郷愁が漂う、美しいイングリッシュガーデンを想起させます。
同じくアルコヴァでは、英国のジュエリー&セラミックブランド「コンプリーテッド・ワークス」による新作のオブジェと家具コレクションが初公開されました。ヴィラ・ボルサーニの一室に展示されたこれらの繊細なガラスや金属の作品は、不思議な質感を持つドレッサーの上に置かれ、現代的な静物画さながらの空間を生み出していました。
もう一つのアルコヴァの会場であるヴィラ・バガッティ・ヴァルセッキでは、意外なコラボレーションが展開されました。ファッションブランドのスーパー・ヤヤとアーティストのコニー・ヴァレッセがタッグを組み、「Softness and Strength(柔らかさと強さ)」と題したチェアコレクションを発表。繊細な花々の彫刻が施されたブロンズ製フレームを、スーパー・ヤヤのテキスタイルがゆったりと包み込みます。力強さと素材感、そして儚さが詩的に交差するインスタレーションです。
スタジオKOは、Beni Rugsのために手がけた新作ラグコレクションを発表しました。会場となったのは1930年代の繊維工場の跡地。壁一面に紙が貼られた無人のオフィスは、まるで時が 止まったかのよう。静寂のなかに物語が詰まった、不気味でありながらも優美な空間が広がっていました。
ミラノ・デザインウィークは、デザイン業界の変化を理解し、先読みするための重要な観測拠点です。そしてペクレールとって、クリエイティブな洞察や未来予測のインスピレーション源として欠かせない存在です。
「エンバイロメント&デザイン 26-27年秋冬」トレンドブックは、冊子版とデジタル版ペクレール+の両方でご覧いただけます。
詳細についてはお問い合わせください。