2025年1月のメゾン・エ・オブジェは、「シュル/リアリティ」というテーマで開催されました。このテーマは、アンドレ・ブルトンの「シュルレアリスム宣言」から100年を迎えたことを記念して、ペクレールの協力のもとに考案されたものです。「シュル/リアリティ」では、ファンタジーや歪み、偶然性、ユーモア、詩的な表現をヒントに、新しいシュルレアリスムの可能性を探ります。予想外の魅力や創造性に満ちた空間を生み出し、未来のインテリアやデザインに新たなアイデアを提案することが目的です。

What’s New? In Décor(新しい装飾)

「シュル/リアリティ」の詩的な世界に没入させるこの空間は、トレンドの専門家エリザベス・レリッシュによってデザインされました。フロア全体に描かれた迷路のモチーフは私たちの無意識を表しており、現実から切り離された夢と驚きの探求へと誘います。

特に印象的だったのは、「ドリーム・チャンバー(夢の部屋)」と「ヒプノティック・コリドール(目の眩むような廊下)」の展示です。「ドリーム・チャンバー」は想像力や詩的な美しさが際立ち、まるで夢の世界に迷い込んだかのような感覚を味わえます。また、「ヒプノティック・コリドール」では、ゆがんだストライプ模様や遊び心あふれるオブジェが視覚を揺さぶり、現実と幻想の境界を曖昧にします。これらの没入感あふれる演出を通して、未来のインテリアを形作る色や素材の新たな可能性が探求されました。

What’s New? In Hospitality(新しいホスピタリティ)

ユークロニアのジュリアン・セバンがデザインした200㎡の空間「ホテル・ユークロニア」は、独自のホスピタリティのコンセプトを通じてシュルレアリスムへのオマージュを捧げています。この空間は幾重にも重ねられたファブリックで構成されており、謎めいたモノリスのような外観を持ち、その内部には温かみのある幻想的な世界が広がっています。五感を 刺激するよう緻密にデザインされた空間は、訪れる人々を夢のような体験へと誘います。

予想外の展開が続くこの旅では、部屋ごとに様々な驚きが待ち受け、続々と新たな発見を させます。特に印象的だったのは、伝統的なホスピタリティの概念を覆すような、不思議な雰囲気に包まれた「ミステリアス・スモーキング・ラウンジ」です。遊び心に満ち、時代を超越したこの空間演出は、今シーズンのテーマを見事に体現していました。

フェイ・トゥーグッド「ウーマニフェスト!」

2025年の「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた英国人デザイナー、フェイ・トゥーグッドは、シュルレアリスムの視点を通じて自身の創作プロセスを探求する没入型インスタレーション「ウーマニフェスト!」を発表しました。素材の存在感が際立つこの空間は、触覚的で芸術的な体験を提供し、女性のエネルギーを称えます。展示は「ドローイング」「彫刻」「素材」「風景」という4つのゾーンに分かれており、訪れる人々を感覚的な旅へと誘います。彫刻的なフォルムと夢のような感覚を融合させた彼女の世界観は、従来の展示とは一線を画し、より直感的で感情に訴えかけるデザインのアプローチを提案しています。

トーマス・ハールマン「キュレーティオ」

本展が初の公開となった「キュレーティオ」は、トーマス・ハールマンが手掛け、コレクティブルデザインと卓越したヨーロッパのクラフツマンシップに特化した空間。このインスタレーションでは、クリスタルとコンクリート、レトロとモダンといったコントラストが際立つ限定アイテムが展示されました。従来の文脈から解き放たれたアイテムが、新たなストーリーを生み出しています。形・素材・知覚の関係性を深く探求し、新たな表現に挑戦した展示です。

ブリス(至福)

メゾン・エ・オブジェで注目したトレンドの中でも、特に際立っていたのがこの    「ブリス(至福)」のムードでした。これはペクレールの「エンバイロメント&デザイン 26-27年秋冬」トレンドブックで提案したテーマの一つで、時代を超えて愛されるフォルムやデザインへの関心が再び高まっていることを示しています。その背景には、品質へのこだわりや、世代を超えた快適性の追求があります。デザインがシンプルさや本質に回帰する中で、ストーリーテリングがより重要となり、伝統とモダンが調和しながら、素朴なスタイルに詩的な要素を加えています。

このトレンドを象徴するアイテム:マチュー・シャリエールが発表した、カラフルな藁の象嵌を施したコーヒーテーブルとサイドボード。独自のデザインアプローチによる色と柄の絶妙な組み合わせが、鮮やかで 洗練された美しさを生み出しています。伝統の職人技とモダンな感性を見事に融合させた、クラフトマンシップが光る作品です。

マルゴー・ケラーの「ミレイオ」コレクションからは、伝統的な藁細工の椅子を現代的に再解釈したスツールとアームチェアが発表されました。スツールは、柔らかさとシャープさを兼ね備えたフォルムが特徴で、職人技の伝統をエレガントにアップデートしています。アームチェアも同様に、ゆったりとした座り心地を追求しつつ、数少ないフランスの椅子工房で、職人の手により制作されています。

Me & Kによる新作テキスタイルコレクションは、タータン、チェック、イカットなどのタイムレスな柄と織りの技術が特徴です。ブランドならではの豊かな質感と色彩が際立ち、温かみのある洗練されたホームテキスタイルを提案しています。このコレクションもまた、伝統とモダンを見事に融合させ、職人技の魅力を存分に引き出しています。

エンバイロメント&デザイン】 トレンドブックでは、さらに多くのトレンドを紹介しています。このトレンドブックは、4つのライフスタイルに焦点を当て、消費者の新たな意識に即したクリエーションのアイディアを提案する、 主要なインテリア&デザインのトレンドを読み解くために不可欠なツールです。

トレンドブックとペクレール+につきましては、グノクル株式会社までお問い合わせください。

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