2025年1月16日から20日まで開催される次回のメゾン・エ・オブジェは、現代のデザインにおけるシュルレアリスムの新たな解釈がテーマです。シュルレアリスムが再び注目される 背景とその創造性、そして消費者の願望(詳細は前回の記事をご参照ください)を基に、居住空間、リテール、ホスピタリティの未来を考察します。「シュル/リアリティ」が現実の枠を広げることにより、デザイナーは没入感のある物語を生み、驚きをもたらす夢のような空間が創り出されます。

居住空間の未来

家はもはや単なる住まいではなく、クリエイティブな逃避と驚きの空間へと進化します。 個性を表現し、感情を描き出すキャンバスとして、現実を超える空想の次元にまで高められるのです。インテリアには錯覚やだまし絵の効果、ユーモアなど、あらゆる仕掛けが施され、唯一無二の特別なものに変わります。そして日常生活は無限の遊び場となり、あらゆるものが可能な世界が広がります。

この夢のようなビジョンを通して、ソファはブランコに変わり、空間は超常的なラインを 描き、壁や天井は雲が浮かぶ青空へと姿を変えます。例えば、ティム・ヴェレスノフスキーの足型のヘッドボードのように、ベッドが驚くような変形を遂げます。ゲームが空間を構成する中心的要素となり、ダイニングテーブルの代わりにビリヤード台が設置されます。色はよりソフトになり、暖かなウッディトーンに溶け込みます。一方、大胆で表情豊かなタイルが主役となり、個性的で風変わりなアイテムが驚きとユーモアをもたらします。

リテールの未来

ブランドの核となるビジュアルアイデンティティと一致するかどうかに関わらず、「シュル/リアリティ」の美学は、小売業界に大きなチャンスをもたらします。それはつまり、進化し続ける独自の体験を消費者に提供できることです。これを実現するためには、細部にまでこだわり、遊び心を加えた没入型のテーマ演出により、ショッピングの瞬間的な喜びを創出することが必要です。映画のようなストーリー性を持つ空間は、ゲストを詩的な世界へと引き込み、商品に対する認識に変化をもたらします。遊び心にあふれた店舗は、「インスタ映え」する革新的な空間へと変貌します。

時にロマンティックに、時にミニマルに展開されるこのトレンドは、詩的なムードを湛え、驚くようなショーウィンドウやインスタレーション、演出を通じてリテール空間に新たな 息吹をもたらします。そして例えば、紙吹雪で覆われたキューブ型の椅子に座ったり、丸く膨らむハンドバッグ型の店舗の中を歩き回ったり、ショーウィンドウに並ぶ巨大なハトに 目を奪われるような体験が待っています。中でもソウルの話題のパティスリー「ヌデイク」の新店舗は、カウンターからテーブルの脚、ランプの台座、さらにはアームチェアやソファに至るまで、あらゆる場所がクロワッサンのオブジェで装飾されています。

ホスピタリティの未来

遊びの領域を超えた「シュル/リアリティ」の美学は、逃避の起爆剤として機能すると同時に、排他的かつこれまでにない斬新さをもたらします。特にホスピタリティ業界に向いているこの特性は、完全な没入体験を提供し、日常の忙しさから解放されたいという願望に応え、親密で詩的な想像の世界を創り上げます。例えば、さまざまな時代やスタイルを組み合わせることで、単なる模倣を超える折衷的な美しさが生まれ、(例えばヨルゴス・ランティモス監督の「哀れなるものたち」など)映画のように壮大な世界を創り出します。

空間を占める巨大なアートや型破りな構造、シュルレアルなモチーフが、その魅力的なデザインを通じてゲストに逃避の感覚をもたらします。例えば、イスタンブール空港のパティスリーは、ガラスの水しぶきの舞うコンクリート製の噴水が、空間全体を没入型のアート作品へと変貌させています。Wutopia Labがデザインした上海のエンターテインメント施設は、熱気あふれるサーカスのテントのような雰囲気を醸し出しています。また、ロンドンのプラダカフェは、ウェス・アンダーソンの気まぐれな世界を彷彿とさせる、洗練されたピスタチオグリーンの壁と白黒のチェッカーボード柄の床が特徴です。

これらの空間は、伝統的なホスピタリティのあり方を意図的に覆し、驚きと感動に満ちた ラグジュアリーな体験を創り出しています。過剰なほどの遊び心と複雑なデザインによる 創造性とエレガンスの相乗効果によって、ゲストを魅了する空間が生まれるのです。

2025年1月16日(木)午前11時に開催されるメゾン・エ・オブジェでのオープニングカンファレンスでは、この「シュル/リアリティ」のテーマ、およびデザインや装飾における新たな夢の領域についてさらに深く掘り下げます。

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