2025年1月16日から20日まで開催される次回のメゾン・エ・オブジェは、現代のデザインにおけるシュルレアリスムの新たな解釈がテーマです。このテーマは、単なる芸術運動へのオマージュにとどまらず、現実の枠を超えた物語に没頭したいという消費者の欲求を浮き 彫りにします。また、「空想」を刺激する新たな世界を創造する上で、デザイナーが果たす重要な役割にもスポットを当てています。
シュルレアリスムから「シュル/リアリティ(超/現実)」へ
偶然の創造、ゆがめられた形と現実、そして画一的な世界の破壊…シュルレアリスムの概念は、マグリットやダリの絵画や彫刻によって視覚化され、ルイス・ブニュエルの映画やアンドレ・ブルトンの文学を通して表現され、あらゆる芸術の創造に影響を与えてきました。ポンピドゥー・センターでの大規模な展覧会に象徴されるように、この芸術運動が100周年を迎えた今、創造的な解決策や新しい価値観を見出すための方法として、別世界を創り出すシュルレアリスムの力が重要視されていることは明らかです。
シュルレアリスムとその創造的遺産が、現代の自由の感覚を触発し、既存の秩序を覆して、現実そのものを再構築させようとしています。そして物理的な旅にとどまらない、深遠な 精神探求の旅へと誘います。夢が別の現実への入り口となり、驚くような創造性をもたらします。直感的なプロセスを通して、奇想天外なものや幻のようなものが受け入れられ、相反するものが並存し、驚異的な世界が息を吹き返します。空想が、荒唐無稽なアイディアと野心的な行動をつなぐ架け橋となって、創造性の形を変えていくのです。そして、人々は日常生活の単調さを拒み、解放されることで新たな自由を得るのです。
ペクレール・パリのデザイナー/トレンド予測専門家であるシャルロット・カザルスは、「私たちはシュルレアリスムの現代における解釈を探求し、その表現が100周年の記念にとどまらず、さまざまな形に広がる様子を検証したいと考えました」と説明します。また、戦略プランナー/未来学者のブリュヌ・ウアクラットは「驚きを甦らせ、既存の秩序に挑むこの力は新しい現実を想像し、育むための豊かで肥沃な土壌です。この『シュル/リアリティ』によって、シュルレアリスムの世界の新しい解釈が明らかになります」と付け加えています。
微弱なシグナルを美学に翻訳する
創造的な領域におけるシュルレアリスムの復活には、「違った生き方をしたい」という願望が反映されています。現実の制約から解き放たれた、さまざまな分野のアーティストやクリエイターたちがシュルレアリスム的な作品を生み出しています。ここでは、このムーブメントを牽引する取り組みの一部をご紹介します。
・食材を主な創作の媒体として使用する世界的に有名なアーティスト、ライラ・ゴハーは、妹のナディアとともに「Gohar World(ゴハーワールド)」というブランドを立ち上げ、遊び心あふれる家庭用品やリネンを提供しています。
・ アメリカのスタートアップ Prophetic(プロフェティック)が、2025年に発売を予定している「Halo」。このデバイスは、超音波で前頭葉を刺激することにより明晰夢(自分が夢を見ていることを自覚し、それをコントロールできる状態)を誘発します
・ロエベと自身のブランドで知られるデザイナー、ジョナサン・アンダーソンは、目を欺き、現実をねじ曲げ、遊び心あふれる形で知覚を操作します。ボリューム感やトロンプルイユ(だまし絵)効果、縮尺の変化、オブジェクトの再解釈を通じて、ラグジュアリーの概念を再定義しています。
・グラフィックアートスタジオ Violaine& Jérémy(ヴィオレーヌ・アンド・ジェレミー)は、ファンタジーを通して美を表現します。なじみ深いイラストやタイポグラフィを破壊する、その軽やかなデザインの裏には、既存の表現を深く問い直す意図が隠されています。
・バルセロナのマンダリン・オリエンタルのレストランでは、サルバドール・ダリの料理本『Les dîners de Gala』の14のレシピをシェフたちが再解釈した料理を提供しています。アートと美食の融合するユニークなメニューが、パフォーマンスと感覚的な喜びを味わえる食の体験を実現しています。
消費者の領域:刺激的な創造性と没入感のある驚き
非現実的で不条理なものは、私たちを夢のような世界に没入させ、理性ではなく感情に、そして無意識に訴えかけます。支配的な社会においては、このアンバランスな世界が休息をもたらし、私たちをスローダウンさせるのです。次に、日常生活の中でもう一つの 現実を喚起する創造の例を見てみましょう。
この「シュル/リアリティ」は、インテリアデザイン、リテール、ホスピタリティにどのような影響を与えるのでしょうか?また、この美的手法や新しい使い方をどのように 活用すれば、消費者の願望に応えることができるのでしょうか?このテーマについては、今後の記事でご紹介します。
2025年1月16日(木)午前11時に開催されるメゾン・エ・オブジェでのオープニングカンファレンスでは、この「シュル/リアリティ」のテーマ、およびデザインや装飾における新たな夢の領域についてさらに深く掘り下げます。