危機後の消費者は、基本を見直し、消費の合理化を図っています。しかし本来、消費は喜びをもたらすものであり、消費者が安心して物理的体験とデジタル体験を楽しめる落ち着いた環境を提供していく必要があります。そしてブランドには安心感と魅力、信頼性、責任のバランスが求められています。

エンバイロメント&デザイン2021-22年秋冬トレンドブックでも取り上げた、新しいビジネスモデル・デジタル化・没入感のコンセプトを基に、この「新しい本質主義」の価値観と期待に応えられるリテール体験について考察します。

簡素化し、充実させる

小売のビジネスモデルが変わる中で、「物理的空間」は体験や利便性、サービスにますます重点が置かれ、購入がその最終目的ではなくなっていくでしょう。デジタル化が加速し、自分たちの価値観やあり方を見直す「新しい本質主義」は、ブランドに対し、シンプルで充実したデジタル+物理的なショッピング体験を求め、さらにはパーソナライズされたサポートを期待しているのです。

このような消費者は、購入動機からクリック&コレクト(ECサイトで商品を購入し、自宅以外の場所で商品を受け取ること)、ネット予約、店頭での予約まで、ブランドとの接点や販売により一層注意を払います。そして支払いには非接触型、衛生管理の徹底、現地配送が好まれるようになるでしょう。

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安心感、快適さ、癒やし

自分が消費するものだけでなく、周囲の人々に意識を向けている消費者の欲望を喚起し、購買につなげるためには、安心感のあるシンプルな環境が不可欠です。

快適な環境づくり

店舗には、考え抜かれたシンプルな環境づくりと、視覚的にわかりやすいビジュアルマーチャンダイジングを取り入れます。静けさを優先した穏やかな雰囲気の中で、実用的で繊細なデザインを提供し、その普遍的で安定した品質で消費者に安心感を与えます。

2019年、スペインのスーパーマーケットチェーンであるConsumは、顧客体験を向上させるために、すべての人の目線の高さに合わせた空間の構成から、騒音を軽減するフロア、天井のネオンに代わるイルミネーションディスプレイまで、落ち着きにこだわった店舗をオープンしました。

 + ソーシャルディスタンスの制約を特別な時間に変える

衛生面を考慮しつつ、顧客の信頼を得るために、親密な雰囲気の中でゆったりとした時間を過ごすことのできる、個別または少人数の予約を行うレストランがあります。

アムステルダムにあるレストランMediamaticでは、物理的な距離を確保するために、2~3人用の小さな温室内でディナーを提供しています。

VRとARを融合した新たなリアル

物理的な制約のため、ブランドや小売業者はeコマース・プラットフォームにARやVRを取り入れ、より本格的で安心感のあるイマーシブ(没入型)なオンライン・ショッピング体験を実現しています。これにより「リアルに近い」ショッピングが可能になりました。

ギャラリー・ラファイエットは閉店期間中に、「エクスクルーシブ・ライブ・ショッピング」というバーチャルなサービスを提供しています。これは世界中の顧客が120のブランドの中から1つを選び、ビデオチャットを通じて、パーソナル・ショッパーやショップの店員と一緒に商品を選び、購入することができるというものです。

またVeertusは、製品のバーコードをスキャンすると、スマートフォン上でバーチャルな試着ができるアプリです。試着後に注文すれば、店頭で商品を受け取ることができます。

サスティナビリティと社会的コミットメントを優先する

この新しい本質主義の消費者は、自らの「価値観」に疑問を抱く一方で、ブランドがサスティナビリティと社会的責任に取り組むことを期待しています。単なるアップサイクルにとどまらず、アーカイブを活用した「コレクター・カプセルコレクション」の提供や、拡大する二次流通と「限定品」への需要に応える必要があります。

フランスのウィメンズブランドSezaneは、2019年からアーカイブに特化したオンラインセレクションを設けています。また、前シーズンの残布を使用した再入荷品や限定品の販売も行っています。そして現在、これらの売上の利益の一部が、社会活動の支援に使われています。