イメージの氾濫がもたらしたもの
パリのジュ・ド・ポーム美術館で2020年6月7日まで開催されている展覧会「スーパーマーケット・オブ・イメージス」をご紹介します。
*新型コロナウイルス感染拡大抑制のための外出制限により、ジュ・ド・ポーム美術館は現在休館しています。
この展覧会を紹介する理由
ソーシャルネットワーク上では、1日あたり30億もの画像がシェアされています。「イメージのスーパーマーケット」と題したこの展覧会は、増え続ける画像を捉えた国際的なアーティストたちの作品を展示し、イメージの偏在と人々のつながりについて考察したものです。
経済、文化、ファッション、ビューティ、デザイン…、おびただしいイメージは私たちの消費や表現の方法をどのように変えたのでしょうか?
私たちの社会や行動に直接的な影響をもたらしている疑問に答えるため、この展覧会のキュレーターの1人であるマルタ・ポンサにインタビューしました。
ビジュアルの氾濫は、日常生活における私たちの美意識にどのような変化をもたらしたのでしょうか?
マルタ・ポンサ(MP):私たちは今、イメージが支配する社会に生きています。私たちはインターネットやYouTube、デジタルイメージを見続けています。標準化されたイメージを気軽に目にできることは満足感をもたらしますが、美に対する視点を陳腐化させてもいます。
そしてこの新しい観念は、イメージそのものの内容やそのメッセージに集中するものであり、メッセージを肉付けするためにふさわしいイメージで構成する、という従来の方法を崩壊させています。
こういった新しいイメージの使い方によって、自分自身や他人の求めるイメージが作り上げられているのでしょうか?それとも反対に、「不完全さ」が許容されているのでしょうか?
MP:例えば、展覧会の始めに展示されたアーティストのイヴァン・ロスの作品「Since you were born(あなたが生まれてから)」は、今の私たちの自己定義の方法を視覚化したものです。私たちのポートレートは、ソーシャルネットワーク上にアップすれば、友人やコミュニティだけにとどまらず、公になります。バーチャルライフやソーシャルネットワーク上で、私たちは自己描写しています。そしてシェアされた描写がまた、自分自身や他人のイメージに反映されるのです。
すべての世代に向けたこの展覧会は、ステレオタイプでない美しさを受け入れることを意図していますか?
MP:アーティストのマーサ・ロスラーの作品は、ビューティコスメ、ファッションブランドが強いる美の定義によってモノ化された女性のイメージの良い例です。情報の拡散が長い間、紙媒体やテレビに限られてきたことが、女性のイメージをステレオタイプなものに留めていました。
そして今、若い世代が新たな行動様式をもたらしています。どこにいてもイメージに触れられることの良い点は、美に対するより自然な見方が急速に広がっていることです。
美しさが、すべての人のものになると思いますか?
最も若い世代は、とてもオープンなアプローチでイメージを使った自己描写をしています。そしてこれは自分の体験をシェアする、非常にダイレクトで直感的な方法なのです。無邪気であると同時に、自分自身を表現するイメージを、この世代特有の方法でコントロールしています。私たちはもはや、完璧な美しさを公に打ち出す必要はないのです。