この前例のない時代を迎え、私たちの社会・環境への意識が高まり、価値体系が新たに再構築されようとしています。2022年春夏シーズンのメンズファッションは、美しいと同時に責任ある仕立ての良いベーシックへの回帰と、強く主張する自由な創造性との間で揺れ動いています。

2022年春夏トレンドブックの発売に際し、メンズファッション・ディレクターのイザベル・ラルティーグが、変化する市場を読み解き、ブランドのクリエイティブな挑戦を後押しするためのビジョンを語ります。

現在から2022年までのメンズファッションについてのビジョンと、今号のトレンドブックの起点となったコンセプトについて教えて下さい。

イザベル・ラルティーグIL):2020年夏シーズンの生産と販売ができなくなった今、メンズファッションは変革と挑戦の時代に突入しています。

プレミアム・ベーシックへの回帰と強く自由な創造性が共在する中で、製品の実用性を重視しつつ、ますます大胆に創造性を打ち出すことにより、市場の先を行くアプローチを試みました。

ブランドにとっての課題は、社会や環境に対する責任を負い、独自の世界観を表現しつつ、どのようにして新しいコレクションを生み出すかということです。

IL : 持続可能性と多様性は、私たちの日常生活の一部になっていくでしょう。過剰消費の時代は終わったのだから、未来のメンズファッションも成熟し、スローダウンし、公正な製品へと戻さなくてはなりません。そして、単なる懐古趣味に走ることなく、「ノウハウ」をクリエーションの中心に戻すこと。

普遍的なイメージを押し付けることなく、より流動的で「エイジレス」な男性らしさを表現する強い個性を持つ服を作ること。多様な男性らしさのビジョンを提示し、形式にとらわれない本物のインクル―シビティを重視します。

危機以降に顕著なのは、どのような消費者タイプでしょうか。また、新たなニーズは何でしょうか?

IL:ペクレールが消費者行動や欲求の変化を予測するために開発したプロファイルを「アーキスタイル」と呼びます。中でも、本質主義と誠実さへの回帰が見られています。これらの消費者は、「忠誠心」や「文化や技術の伝達」という考え方を基に、快適で耐久性のある製品を求めています。

2022年春夏トレンドブックでは、これらの変化を代表し、非常に影響力のあるアーキスタイル「ホーム=コミューター(在宅=通勤者)」を取り上げています。新しい用途、フレキシビリティ、ウェルビーイング、快適さなど、この「ホーム=コミューター」たちは自宅にいながら、時間や空間、仕事、デジタルとの新たな関係に適応しています。ファッションでは、組み合わせやすく着心地の良いジャージーのニットウェアやホームウェア、あるいはシックなパジャマ、ビーチのアスレジャーウェアのようなシルエットが選ばれるでしょう。

まだ先行きの不透明なメンズウェア市場で進化していくために、ブランドはどのような変化を取り入れていくべきでしょうか?

IL:革新を続け、持続可能な発展を目指すこと。例えばアップサイクル、既存の製品やデッドストックを作り変えたり、中古品の価値を高めたり。あるいはシーズンレスなカプセルコレクションを打ち出して、全体のコレクション数を減らします。ドレスコードを押し付けるのではなく、組み合わせやすく長く使えるワードローブを提案することです。