色は、単なるトレンドでも、商品を魅力的に見せる方法というだけでなく、ブランドマーケティングの重要な要素です。それは、ブランドに好感をもたらす以上に、長続きする、つまり愛されるブランドに変えるという特別な力を秘めています。ペクレール・パリのスタイルディレクター/カラー・マーケティング専門家のマイ・グエンと、戦略企画/未来予測の専門家、ブリュヌ・ウアクラットが、色の持つ優れた能力について分析します。
ブランドのマーケティングミックスにおいて、色はどのような役割を果たすのか?
色は、最初の購入動機や長期的な嗜好の形成において、非常に重要な役割を果たします。研究によると、消費者の85%が製品を選ぶ際に色を最も重視しており、製品の認知に貢献する要素の80%は色に関連しています。言葉にならないもの、あるいは言葉にできないものを伝えることができる色は、ブランドの文化的なイメージやその価値を瞬時に伝える「きっかけ」として機能します。これが魅力を生み出し、同等の品質を持つ製品ブランドの中から、消費者に選ばれる理由となるのです。したがって、色の個性を持つことがブランドにとって重要であり、ペクレールではこれを「カラー・ポジショニング」と呼んでいます。
カラー・ポジショニングとは何か、そしてその目的は?
カラー・ポジショニングとは、ブランドが競合他社と差別化するための独自の視点のこと。具体的には、ブランドの色を特定し、かつどのように使用するかを定義するものです。この視点は、ブランドのすべてのクリエイティブ表現に影響を与えます。AppleやPrada、Swatchなど、すべての「愛されるブランド」は、独自のカラー・ポジショニングを定義しています。愛されるブランドは一目でそれとわかるものでなければならず、その製品を超えて、共通の価値観や言語でオーディエンスを結びつけます。つまりブランドが、その時代の文化的象徴となるのです。色は文化の非言語的な言語であり、感情にダイレクトに訴えます。また、色はエンゲージメントと愛着を育み、記憶に残ります。
色が成功を導いた、愛されるブランドとは
例えばIKEAは、スウェーデンの国旗の色をロゴに使用し、スウェーデンデザインの日常的な品質の高さや使いやすさを象徴しています。そして強いポップな色と「北欧的」なニュートラルカラーを組み合わせたクリエイティブな色使いを特徴とし、快適さを保ちながらも退屈さを感じさせません。ファッションではJacquemusが、(強烈すぎるほどの)鮮やかで楽しい色のワントーンルックで差別化を図り、創造性を表現しています。このファッションブランドは、過剰さを魅力に変え、「ポップな感覚」をラグジュアリーに変換しています。そしてCartierは、象徴的な赤とゴールドを活用したコミュニケーションで、力のあるブランドの魅力を引き出しています。製品をしまうケースすらも、製品と同様にコレクターズアイテムとなっています。
カラー・ポジショニングはどのように行われるのか?
カラー・ポジショニングの開発は、ブランド全体のポジショニングから始まります。そしてこのポジショニングを色の視点に移し替えて、ブランドの「カラー・ポートレート」を作り出します。「もし私が(こう)で、(こう)表現し、競合とは(こう)差別化するのであれば、色の観点から見た私は(こう)です」、というように。これには、ポジショニングの演習とトーン・オブ・ボイスも含まれます。ブランドのポジショニングと、色彩言語およびその使い方を組み合わせることで —業界特有のバリエーションや競争も考慮しながら— ブランド独自の「色彩言語の文法」を創り出すのです。つまり、ブランドがそのアイデンティティを反映するために、ユニークで個性的、かつ印象的に「色で語る」方法を定めます。そして、この色の文法を、より具体的な形でマーケティングミックス全体に適用していきます。
色は世界共通語なのか?
イエスでもあり、ノーでもあります。元々、色には文化的な違いがあり、今も存在しています。例えば、西洋では喪に服する際には黒を着ますが、イスラム圏やアジア(*)では白を着ます。一方で白は、西洋では平和や純潔、結婚を意味します。しかし、グローバル化に伴い、製品分野においては、イメージや色彩表現にある種の均質化が進んでいます。さらに、文化的普遍性の問題を超えて、個人的な文化的特殊性も存在します。つまり、言葉を介さず色を通じて、ターゲットとの強い結びつきを生み出すために、既成のレシピというものはないのです。
*日本においても、「日本書紀」に当時の喪服は白であったという記録が残されており、室町時代から明治初期までは白い喪服が主流であったとされる。
ペクレールでは、各シーズンの2年前に刊行される「カラー」トレンドブックで、45色のトレンドカラーを発表しています。これらの色は、ファッションやビューティー、インテリア、ライフスタイルの分野に向けたトレンドブックで展開するカラー/配色提案の源となります。
これらの色は、徹底した方法論に基づいて生み出されます。まず、トレンド予測の専門家たちが「CONCERTATION COULEUR(カラーミーティング)」を開催し、それぞれが選択する色とその理由を共有します。その後、カラリストたちが、ここ数シーズンの色の進化を考慮しながら、色の統合を行います。
それを基に、これまで頭の中にしか存在しなかった正確な色合いを手作業で作り出す長いプロセスが始まります。色素を混ぜ合わせる作業では、一滴の違いが大きな影響を与え、正確な濃度になるまで一筆一筆塗り重ねられていきます。さらに、ペクレールのスタッフ全員での熱いディスカッションを経て、未来のシーズンの色が決定されるのです。
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